歳をとっても寝たきりにならないように
みなさんの周りにも、「お年寄り」の方がいますよね。みなさんにとって一番身近なお年寄りは、おじいちゃんやおばあちゃんでしょうか。
おじいちゃんやおばあちゃんにも、みなさんと同じような「子供時代」がありました。
みんな、生まれた時の赤ちゃんから、子供時代を過ぎて大人になっていきます。みなさんの中には、お父さんやお母さん、兄弟だけでなく、ワンちゃんや猫ちゃんといった、動物の家族とも一緒に暮らしている人もいるでしょう。
人間と動物で大きく違うのは、寿命の長さと大人になっていく速さです。
今、私たちの暮らす日本は世界でも有数の長寿国として知られ、百歳を超えても元気に生活している方がたくさんいます。
ワンちゃん、猫ちゃんたちも長生きになっていますが、私たち人間ほどには生きられません。長くても二十年くらいで天国に行ってしまうのです。それでも、その二十年の間にワンちゃんや猫ちゃんはしっかりと大人になって、お年寄りになっていきます。
みんなのお家に、もし自分たちの弟や妹として家族になったワンちゃん、猫ちゃんたちがいたら、彼らは生まれてからほんの一年で、もう子供を産める大人になっています。
七歳くらいになると、みなさんのお父さんやお母さんたちと同じ年齢になります。そして、十歳を過ぎた頃には、おじいちゃんやおばあちゃんと呼ばれるようになるのです。私たちはどんどん抜かされて、あっという間にワンちゃん猫ちゃんは人生の輩先(せんぱい)になっていきます。
おじいちゃんやおばあちゃんになったワンちゃん、猫ちゃんは、人間のようにシワができたりはしませんが、黒い毛の動物たちには白髪が出てきます。歩く速さが今までより遅くなったり、歩ける距(きょ)離(り)が短くなったりもします。走ることが少なくなるかもしれません。
また動き回っている時間よりも寝ている時間が長くなってきます。呼びかけた時に、気付くのが遅くなったり、気付かなかったりすることもあります。目もよく見えなくなって、つまずいたり、ぶつかったり、いつもと違う場所では怖がって歩かなくなるかもしれません。
食べるのもゆっくりになって、こぼすこともあります。食べる量も、それまでよりずっと減ってしまうこともあるでしょう。猫ちゃんの場合も、高いところに飛び乗ることができなくなってしまうかもしれません。
また若い時には元気いっぱいで、病気で動物病院に行くことがなかったというワンちゃんや猫ちゃんでも、体調を崩しやすくなって動物病院に行く回数が増えていきます。
歳をとることは自然なことなので、これに逆らって若くなることはできません。
ですが、歳をとってもいつまでも元気でいることはできます。
皆さんの周りにいるお年寄りの中には、「そんなお歳なのにこんなに元気なの!?」という方がいませんか?反対に、「思っているより本当は若かった・・・・・・」という方もいると思います。
動物も同じで、そのワンちゃん、猫ちゃんによって、全然違うのです。
どうしてそんなに違いが出るのでしょう。
それは、若い時からどのように生活しているのかによって変わってきます。
若い時からあまり運動せずに、家の中で寝てばかりいて、おやつや人の食べ物ばかり食べていると、筋肉が落ちて脂肪ばかりになり、体を支えて立っていること自体が辛くなってきます。動かない生活をすると、心臓や呼吸の機能も低くなりすぐ疲れるようになってしまいます。
そうなると、本当に歳をとった時に、寝たきりになってしまう可能性が高くなるのです。
いつまでも元気に、自分の動きたいように動けるお年寄りになるには、若い頃からその動物にあった良いご飯を食べ、楽しく遊び、自分の足でしっかりと歩かせ、ゆっくりと眠るという健康的な生活を送ってもらうことが大事です。
子犬、子猫の時にはみなさんがたくさん遊んであげると思います。でも、みんなもだんだん大きくなって、勉強や友達と遊ぶことが忙しくなってワンちゃん、猫ちゃんと遊ぶ時間が減ってしまうかもしれません。もしかすると、先に大人になっていくワンちゃんや猫ちゃんが子供の時のように遊んでくれなくなるかもしれません。
それでも、ワンちゃんも猫ちゃんも遊ぶことが大好きです。遊んであげることで体や頭を使って、元気に過ごせます。
たくさん体を使えば、お腹が空いてしっかりご飯も食べられます。
遊ぶ時間が短くなっても、少しの時間でもしっかり遊んであげましょう。ワンちゃんは、一緒にお散歩に出て、自分の足で色々な場所を歩いてもらいましょう。ご飯の前などにする、「おすわり、お手、おかわり」なども、皆さんの言葉を理解するために頭を使い、その通りに体を動かす運動になります。立ったままいることも大事な運動です。
東京のように、車の多い地域では散歩の時はリードをつけなければいけません。たまにはリードをしなくても思い切り走れるような場所に遊びに行くのもとても良いことです。
若い時から、しっかり頭と体を使っていつまでも自分の力で元気に動いてもらいたいですね。
歳をとるということ
動物が歳をとると、どういうことが起きるのでしょうか。
高齢になると、筋肉の減少や背中が曲がるなどの骨の変形が起こる筋骨格系の衰(おとろ)え、耳が遠くなったり、目が見えにくくなる感覚系の衰え、腎(じん)臓(ぞう)が悪くなったり、尿漏(も)れをしたりする腎(じん)泌(ひ)尿(にょう)器(き)系(けい)の衰え、心臓や血のめぐりが悪くなる心血管系の衰え、下痢や嘔(おう)吐(と)などの消化不良が多くなる消化器系の衰えなど、人とおなじように犬や猫の体にも様々なことがおこります。
これらの変化のなかで、高齢になるとよくおこっていることが精神や認知、活動性の変化をもたらす脳機能の衰えです。
脳機能の衰えの一つに、「認知機能不全症」というものがあります。
難しい言葉ですが、これは歳をとった動物が、物を見たり聞いたりするなどの能力が徐々に低くなって、色々な行動に障害がでる病気のことです。
これと似たもので、人にも、「認知症」という病気がありますが、全部が一緒ということではありません。
しかし、家族の助けがないと生活が苦しくなるというところは変わりません。
犬では12歳、猫では14歳を過ぎるとこの病気になることが多いと言われています。この病気は、性別や犬種、体の大きさに関係なく起きてしまうものです。
その一方で、あまり栄養のバランスがよくないご飯をあげたり、適度な運動をしていなかったりする動物は認知機能不全症にかかりやすいとも言われています。
○認知機能不全症の具体的な症状
- 場所、家族、ご飯を食べたことなどがわからなくなってしまう。
- 昼間はずっと寝ていて夜に活発になったり、睡眠時間が短くなり頻繁に起きたりする。
- トイレの失敗や一度覚えたトレーニングができなくなる。
- ウロウロ徊徘(はいかい)したり攻撃性が増したり、無気力になったりする。
- 飼い主と離れたり、周囲の環境にうまく適応できなくなったりしたとき、不安感情が増加する。
○治療・対処法
一番大事なのは、認知機能不全症にかからないようにすることです。
それでもこの病気になってしまったときは、それより悪くならないようにすること、症状を和らげてあげることが大切です。
お薬を使って症状を進みにくくする、栄養バランスの良いご飯に変える、ワンちゃん、猫ちゃんが暮らすお家を住みやすくしてあげることが大事になります。
散歩に行ったり、ボールやおもちゃを使った遊びをしたり、脳への刺激になるものは何でもやってみましょう。おやつなどの報酬があると、ワンちゃんのやる気も上がります。
食事をとりやすくしたり、ベッドを快適にしたりするといった安心できる居場所作りをするとなお良いでしょう。