はじめに

私たちの周りには様々な動物がいます。最初に思いつく動物は家で飼っているペット達でしょう。ペットは家族の一員として共に過ごしながら私たちの心を癒してくれます。また、ペットのほかにも、私たちの生活を助けてくれるワーキングアニマルと呼ばれる動物がいます。古くからは猟犬、牧羊犬、そりを引く犬、農耕用の牛馬たち、伝書鳩などがいますし、近年、私たちのために働いてくれる動物たちもさらに増えています。これらの動物は人間と共存して暮らす動物で、人が責任をもって最後まで飼育管理する必要がある動物です。

その他にも、タヌキ、野鳥、ヘビ、カエルなどを含む多くの野生動物がいます。野生動物は自然の中で人間の手を借りず、自分たちだけで生活をしており、人間が餌を与えたり飼育したりしてはいけません。

それぞれの動物について私たちとのつながりを理解し、共に生きることを考えてみましょう。

私たちの身近で働く犬たち

盲導犬

私たちは道を当たり前のように歩いていますが、実際にはすれ違う人がいたり、電柱や段差があったり、注意しなければいけないことがたくさんあります。
盲導犬は、目の見えない人、見えにくい人が行きたいときに行きたい場所へ出かけられるように、障害物を避けたり、段差や曲がり角を教えたり、安全に歩くためのお手伝いをします。
盲導犬が体に着けている白い胴輪をハーネスといいます。盲導犬は使用者の左側を道に沿ってゆっくり歩くことが基本となっています。そして、道に変化があるとそれぞれの状態に対応した特別な動作をします。その動作がハーネスを通して人に伝わることで、使用者が安全に歩くことができるのです。また、ハーネスには「盲導犬」と書かれています。
盲導犬は、カーナビゲーションのように目的地まで連れて行ってくれると思う人がいるかもしれませんが、実際は人の頭の中で目的地までの地図をイメージし、盲導犬に指示を出しながら歩きます。お互いにコミュニケーションをとることで安全に歩くことができるのです。

聴導犬

私たちの周りには、目覚まし時計やインターホンなど、音でいろいろなことを教えてくれるものがたくさんあります。聴導犬は、耳が聞こえない人、聞こえにくい人の代わりにその音を聞き分け、合図で教えてくれるのです。
寝ている最中に警報音が鳴ったときは、使用者を起こして危険を知らせてくれますし、子供の泣き声や電話が鳴ったときや、インターホンが鳴ったときは、その場所まで導いてくれます。また、外出しているときも、自転車や自動車の警笛音が鳴れば、使用者に教えて周囲の注意を促します。非常時に助けを呼びたいときには代わりに他の人を呼びにも行きます。
これらのことがスムーズに行われることで、使用者は音が聞こえないことからくる不安をなくすことができ、快適で安全な生活を送れるようになります。
聴導犬は他の犬と明らかな区別ができるように、「聴導犬」と書かれた黄色い服を着ています。

介助犬

体に不自由なところがあり、一人では生活をすることが難しい人の手助けをしてくれるのが介助犬です。車いすを引いたり、人が起き上がったり、車いすへ移ったりする際の支えになります。
そのため、大型犬でなくてはなりません。また、ドアを開閉する、エレベーターのスイッチを押す、電話やリモコンを持ってくる、ペットボトルのふたを開ける、落としたものを拾う、衣服を脱ぐ手助けをするなど、まさに体の一部のように助けてくれます。このような介助犬の助けにより、使用者は、他の人に頼らず自立した生活を送ることができるようになります。
介助犬は服を着ていたり、荷物を載せていたり、車いすを引くための胴輪をつけていることもあります。それらには大きく「介助犬」と書いてあります。

補助犬

盲導犬、聴導犬、介助犬のことを補助犬とも言います。
補助犬を必要とする人は多く、その働きにより、補助犬は社会の大切な一部となっています。補助犬を同伴して公共施設や公共交通機関をどこでも利用できます。
外で見かけたときは、仕事をしている最中なので静かにして邪魔にならないようにしましょう。
もし困っているようなら、使用者に声をかけて助けてあげてください。

特別な場所で働く犬たち

警察犬

犬は人間と比べて数千倍ものにおいを感じ取る能力を持っています。この能力を使うことで犯人や行方不明者、持ち物などの特定のにおいをかぎ分け、探すことができます。また、犯人のにおいをもとに追跡したり、犯人を逃がさないために走って追いかけたり、捕まえるための協力をします。さらに、パトロール中には、においや音を調べ、周りに異常がないかを確認します。
人よりも優れた感覚や運動能力で警察官を助けてくれるのです。

災害救助犬

地震や雪山なだれなどでがれきの中に閉じ込められた人や、ハイキング、山歩きなどで行方不明になった人など、色々な機械を使っても人間では探すことが難しい行方不明者の、わずかなにおいを感じ見つけ出してくれます。行方不明者を発見すると、その場所で大きな声でほえたり、引っかいたりして知らせてくれます。

麻薬探知犬

空港や港、国際郵便局など荷物や人が多く出入りする場所で、麻薬というおそろしい薬が日本に持ち込まれないために、それを探し出す仕事をしています。多くの荷物の中から探したり、人が隠し持っているのを教えてくれたりします。他にも、火薬や特定の食べ物などのにおいをかぎ分ける訓練をしている犬もいて、私たちの安全を守ってくれています。

アニマルセラピー

動物と触れ合うことで私たちには色々な変化が起きます。かわいいと思うだけでリラックスできますし、また触りたいと思うだけで元気になります。動物に話しかけることでストレスが減ったり、他の人とも話しやすくなったりします。このように、動物との触れ合いで人の心を癒す効果が期待されているものをアニマルセラピーと言います。
主に、病院や老人ホーム、小学校などを訪問し、多くの人に安らぎを与える活動を行っています。イヌを使うことが多いのですが、おとなしいネコやウサギ、サルを使うこともあります。
中には馬を使うこともあります。その大きな背中に乗ることでリズム感、バランス感覚が養われ、大きな動物を操ることで自信や勇気も身につきます。
また、イルカと一緒に泳ぐ方法もあります。イルカはとても優しい動物で、人とも一緒に泳いでくれます。普段接することのできないイルカと触れ合うことで喜び、前向きな気持ちになれます。
そして、水の中での行動なので、楽しみながら体全体を動かすことで、体を鍛えることができるという効果もあります。

野生動物

人間のいない中でうまくバランスをとりながら生活をしている動物のことです。しかし、人間が生活範囲を広げ、野生動物との生活範囲が重なるようになった結果、野生動物がゴミや畑の農作物を荒らしたり、人に怪我をさせたりするようになりました。そのため、出来るだけ生活範囲が重ならないように住み分けるという考え方が必要と言われています。この考え方を共生と言います。

エサをあげないで

人間と野生動物が共生するためには、人間が野生動物にエサを与えないことが重要です。エサを与えることで動物が楽にエサを得ることに慣れてしまったり、人間を怖がらなくなったりします。
その結果、家屋に侵入するなどトラブルも増えてしまいます。

落ちているひな鳥について

春から夏にかけてスズメやツバメ、ムクドリが子育てをします。
ひな鳥たちは親鳥から餌をもらい、飛び方や餌の取り方を教わり、成長していきます。しかし、飛び方がわからなかったり、少し休憩したりしている間に、人が誤って保護してしまうことがあります。本当は親鳥がすぐ近くで見守っているのに…。これはひな鳥の誘拐とも呼ばれています。
野生動物の生活はそれぞれの動物が独自に切り開き、築いていくものです。ぜひとも、ひな鳥たちの訓練を温かく見守ってあげてください。もし保護してしまっても、すぐに元の場所に戻してあげましょう。例え親鳥が近くで見つからなくても、どこかに隠れて見守っていることが多いです。

最後まで責任をもって

近年、ペットとして飼えなくなった動物を、こっそり池や川、公園や山などに放してしまう人が増えています。放された動物はそこで生活するうちに仲間が増え、今までそこに住んでいた動物たちの保ってきたバランスを壊してしまいます。なかには元々住んでいた日本古来の動物が、新しく入ってきた外国産の動物たちに居場所を奪われるケースも増えています。 このようなことを起こさないためにも、動物を飼う前にきちんと最後まで面倒をみることができるかを確認し、責任と愛情をもって大事に飼ってあげましょう。

あとがき

私たちの周りには家族や友達の他にも多くの人や動物たちが暮らしています。みんなが気持ち良く暮らすためには相手のことを知り、何をすることが一番良いのかよく考えることが大切です。
相手を思いやる気持ちを持ち続けることで、より良い社会をつくっていきましょう。

編集
東京都獣医師会杉並支部
イラスト制作
女子美術大学 学生作品
発行・監修
杉並保健所生活衛生課 (〒167-0051)杉並区荻窪5-20―1 (3391-1991)
平成28年11月発行