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動物通信

年をとった動物とのつきあい方

はじめに
長生きの秘訣
年老いたら
わたし達の役割
おわりに


 はじめに


日本は長寿大国とよばれています。犬や猫においては、日本が世界で長寿国であるかどうかは調べられてはいませんが、様々な要因で長生きになっています。
平成16年に報告された東京農工大学の調査では、平均寿命は犬が11.9才、猫が9.9才となり、12年前と比べ犬で3.3才(のび率約40%)、猫では4.8才(のび率約95%)ものびました。
そこで今回は、飼い犬、飼い猫がどうして長生きになったのか、長生きになった動物達に起こる様々な変化や病気について、また、わたしたちはそのような動物達に対してどのように接すればよいのかについてお話します。


 長生きの秘訣

毎日の観察が大事
犬や猫と生活していく上で、とても大事なことのひとつに、毎日の観察があげられます。
言葉を話せない動物達の態度や体調の変化に気づいてあげるのは、飼い主の役目です。食欲や元気はもちろんのこと、尿や便の状態、歩き方や行動、毛や皮膚や耳など全身の状態を、いつも注意してみてあげましょう。
このような日々の観察によって、小さな変化にも気が付き、早期に獣医師の指導を受けることが重要です。

予防医学・健康管理
予防医学とは、病気の原因を取り除いたり、病気にならないようにすることを言います。例えば狂犬病予防接種、犬猫それぞれの混合ワクチン等の予防接種、犬フィラリア症)※予防)薬投与、などが代表的なものです。最近では猫にも、フィラリア症予防が重要だといわれるようになってきました。飼い主が犬や猫、病気やけがのことを良く知り、適切に飼育することも予防医学のひとつです。
健康管理には、食後のガーゼやブラシでの歯みがきや歯肉のマッサージ、目や皮膚の手入れ、散歩による適度な運動などがあります。そのような様々な努力は、犬や猫の病気を未然に防ぎ、長生きへとつながります。
※フィラリア症:蚊から感染し心臓に住む寄生虫による病気です。適切な治療を受けなければ、死にいたることがあります。

食餌も大事
犬や猫の健康を維持し快適な生活をさせるためには、その動物に合ったバランスのとれた栄養をあたえることが重要です。そして、人と同じように毎日の規則正しい食生活を送れるように心がけましょう。
現在では良質なフードが市販されるようになり、環境や年齢に応じた適切な食餌をあたえられるようになりました。また、病気の予防や発症した時は獣医師の指導のもと、処方食をあたえることが、薬をあたえることと同じくらい重要です。

しつけの役割
しつけは、犬や猫と人が上手にコミュニケーションをとり、おたがいが幸せに過ごすためには欠かせないものです。そればかりでなく、長生きさせるのに大変重要な役割を果たします。
きちんとしたしつけをしない、あるいはあまやかしわがままに育ててしまうと、日々の生活での変化を見落としてしまうかも知れません。またいざという時飼い主のいうことを聞いてくれないかも知れません。本当に具合が悪く食欲がないのに、好き嫌いをして食べないのではと思い、診療を受けるのがおくれる、人の食べ物を食べ塩分をとりすぎ病気になる、診察時に大あばれして十分な診療を受けられない、飼い主のいうことを聞かず道路に飛び出し車とぶつかるなど、どれもきちんと飼い主が動物の身になって育てていなかったからと言えるでしょう。
そんなの、なんだか残念ですし、不幸なことですよね?


 年老いたら

体の変化
年を重ねると犬や猫の体には様々な変化がおこります。みなさんも白髪が増え、一日中寝ている犬や猫を見たことがあると思います。
年をとると若いころとちがって、筋肉の減少や骨格系の変性により体がしぼんだように見えたり背中が曲がったり転びやすくなる、
内分泌系(体の調子を整える力)や免疫系(病気から体を守る力)のバランスがくずれ、毛がうすくなったり病気にかかりやすくなる、腫瘍なども発生しやすくなる、感覚器系(感じる器官)や神経系(考えたり、全身機能を調整する器官)の異常により目や耳がおとろえたり理解するまで時間がかかるようになる、循環器)系(心臓や血管)の機能低下により血液の流れが悪くなり元気が無くなったりむくむようになる、消化器系など内臓(ないぞう)の機能が落ち消化不良(嘔吐や下痢)を起こしやすくなるなど、体のおとろえからいろいろな変化が犬や猫の体におそいかかります。
これらの変化を重い病気にしないようにするには、若い時からの正しい飼育と、少しの変化も見逃さず早期発見・治療することです。
高齢になってからの体調の変化は完治させることがむずかしい慢性病(まんせいびょう)になることも多いので、そのような時は上手に病気と付き合い、健やかな生涯を送れるようにしてあげましょう。

主な病気の見分け方
年老いた犬や猫に多くみられる病気の一例を、一覧表にして挙げてみました。この他にも様々な病気がありますので、詳しくは獣医師におたずねください。

年老いた犬や猫に多く見られる病気

弁膜閉鎖不全 -心臓の弁に異常がおきる-
小・中型犬に多く見られ、心臓内の弁がうまく閉じなくなって血液が逆流してしまい肺や全身に影響が出る病気。
食欲や元気がなくなり、いつもの散歩を嫌がり途中で座り込むようになる、静かにしていても呼吸が荒くなり夜中の咳が増えるなどの症状がみられる。
悪化すると、運動時や興奮時に失神したり、突然死をおこすこともある。
慢性腎不全 -腎臓に異常が起こる-
尿をつくり、体内で不要になった老廃物を体外へ出す働きをしている腎臓の機能が、おとろえていく病気。猫はたんぱく質を多く必要とする(たんぱく質の種類により場合によっては老廃物が多くなる)、水分をあまり取らないなど、腎臓に負担をかけることが多いので、発症しやすいといわれている。
発症初期は水をよく飲み、尿量も増える。ほうっておくと尿毒症(老廃物がたまり、気持ち悪くなる病気)になり、さらに食欲低下、体重減少、嘔吐、貧血などの症状がでてくる。こうなると生死にかかわる。
認知症 -脳の力がおとろえる-
飼い主の判別ができなくなる、何事にも無反応、食べ物をむやみに食べ続ける、下痢もしないのに痩せてくる、トイレ以外の場所で排便排尿をしてしまう、一晩中むだ吠えをする、隅っこに頭を押し付ける、徘徊するなどの様々な異常行動があらわれる。特に15才以上の犬が発症しやすい。
動物のためにはもちろん、家族や近所のためにも、獣医師と相談しながら、少しでも穏やかに暮らせるように工夫することが肝心。
関節炎・骨関節症 -関節に異常がおきる-
動作が鈍くなり、歩くのを嫌がり、前・後の足を引きずったり、痛みを訴えたりすることがある病気。骨が変形したり、関節の動きが悪くなるために痛みを生じるので、骨や関節に負担がかかる肥満した動物や、大型犬のほうが症状が悪化しやすい。
起き上がることや、歩くことができなくなり、介助が必要となることもある。
歯周病 -口の異常-
口臭が強くなり、よだれもふえ、歯ぐきから出血したり、食べにくそうに食餌をする。歯石が原因の場合が多く、歯ぐきは膿み、歯が抜け落ちたり、痛みのため顔をさわられるのを嫌がったり、食欲がなくなることもある。
口の中の細菌が全身にひろがり、いろいろな病気の原因となる。


 わたし達の役割


どう接する?

犬や猫が高齢になったなと感じるのは飼い主です。のんびり、安らか、やさしい、欲がなくなり、物事に動じることない、などのその態度は、わたし達にこの上ない安らぎをあたえてくれます。これらの動物たちと、ゆったりとした気分でくらすのはとてもすてきですが、その一方で体力がおとろえ病気がちになります。老化からくるものなのか、病気なのかを注意深く見きわめてください。
また、ごく普通に生じるような病気でも、もう老齢だからとあきらめがちですが、高齢動物ほど獣医師による、定期健康チェックが必要です。
一人で生きることのできない動物たちは飼い主の深い愛情にたよらざるを得なくなります。苦楽を共にしてきた動物達に、十分な治療や介護を行い寿命をまっとうさせてあげてください。

犬や猫と人間の年齢比較表
犬・猫
人間
犬・猫
人間犬・猫人間
1か月
3か月
6か月
1年 
2年
1歳
5歳
9歳
17歳
23歳
4年
5年
6年
8年
10年
32歳
36歳
40歳
48歳
56歳
12年
14年
16年
18年
20年
64歳
72歳
80歳
88歳
96歳


<参考資料>
犬や猫は人間とちがって、成長のスピードがとても速いです。また、大きさや環境によってもことなりますので、あくまでも参考程度に考えてください。

介助と看護(介護)
先回りして老犬・老猫の気持ちを察し、やさしい気配りと思いやりで接する事が大切です。

老犬・老猫の介護(在宅介護)の注意点
@ 家族のそばにケージを置き様子をみる
A 不安をあたえないように用事は動物が寝ている時にすますなど工夫する
B 起きている時はまめに声をかけ体にふれてあげる
C 体や寝床(ねどこ)を清潔にし快適な温度を保つ
D 体力の低下を防ぐため適度な運動をさせる
E 昼夜の区別をつけさせるために日光浴をさせる
F 定期的に寝返りを行い床ずれを防ぐ
G 食事やトイレの手助けをする
H 不安なことは自分で判断せず、獣医師に相談する
以上の事を心がけ、家族みんなで介護する事が大切です。


 おわりに

今回は、長生きするようになった犬や猫についてのお話でした。
犬や猫は伴侶(パートナー)として、わたし達の心に安らぎをあたえ、生活をうるおしてくれる、くらしに欠かす事のできない家族の一員です。高齢になり介護が必要となった時も、やさしさと心づかい、愛情と責任を持って最期まで気をつかって飼育しましょう。
しかし残念ながら、やがて動物達との別れをむかえなければなりません。地球上に生命が誕生して受けついできた大切な命、くりかえすことのないたったひとつの命、あなたにとって貴重な体験をあたえてくれた命に感謝してください。今はわからないかもしれませんが、その命といっしょに過ごした日々はあなたにとって一生忘れることができない、あなたの一生を決めるような心の糧となることでしょう。

杉並区獣医師会では、毎年秋に、15才以上の動物たちとその飼い主を表彰する、「高齢動物表彰」を行っています。
平成16年度での最高齢は、猫で24才、犬で20才でした。ちなみに14年度では26才の猫がいました。


〜あとがき〜

今回は、年をとった動物とのつきあい方についてまとめてみました。動物達が長生きするということは、わたし達にたくさんの思い出と心の安らぎをあたえてくれます。
どうか動物達の生涯をとおして「思いやり」「いのちの尊さ」を学んでください。


編集
東京都獣医師会杉並支部            
発行・監修
杉並保健所生活衛生課 (〒167−0051)杉並区荻窪5−20―1 (3391−1991)
平成17年10月発行
登録印刷物番号17−0082



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