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基礎講座

歯周病の予防法

あなたのペットの歯はだいじょうぶ?
「ペットの歯周病の見つけ方と予防法」

一生涯自分の健康な歯を保ち続けることは、私たち人間でも難しいことです。では自分で歯ブラシを持って歯磨きの出来ないワンちゃんやネコちゃん達の歯は、いったいどうなっているのでしょうか。
虫歯や歯槽膿漏なんて動物には無いだろうなんて思っていませんか? 口臭があるとか、ヨダレがよくでるとかそんな危険信号は出ていませんか?                       
今回は、ペット達の歯の周囲の病気とその管理、予防法の仕方についてお話しましょう。   

● 歯周病とは?

文字通り、歯の周囲の組織(いわゆる歯茎)の病気のことです。歯周炎、歯槽膿漏、歯槽骨膜炎等の総称です。                                       
統計では、6歳以上の犬、猫の85%に治療を必要とする歯周病が存在しているそうです。流行する病気ではありませんが、弱齢から高齢まで広く蔓延しているのが実状です。           
歯周病は、もし治療を怠れば着実に進行し、ついには歯は抜け落ちます。その間食事は噛めなくなり食欲不振に陥ったり歯根が化膿し細菌が全身に波及する菌血症を引き起こしたりします。また重度の歯周病では、上皮小体機能亢進症、糖尿病、慢性腎炎の引き金にもなります。


 歯周病はどうして起こるの?

歯周病を起こす原因には、個々の体質、年齢、不正咬合などがあげられますが、第一の原因はプラークです。これは白い薄膜状の滑らかな外観の物質で、食物残渣、剥離した細胞、唾液中の糖蛋白、それと特定の細胞によって構成されています。                         
健康な歯肉は、ピンク色でしっかりと歯に密着しています。歯肉溝は浅いかまたは存在しません。
しかしプラークができると歯肉縁は、赤味を帯びて炎症を起こします。臭いも発するようになり、これが歯肉炎の始まりです。                                 
プラークによって引き起こされた歯肉炎部位は、細菌感染やその細菌の代謝物によって慢性炎症へと移行していきます。更にプラークは拡大したポケットに沿って歯根側へ進入していき、歯肉は退縮しついには、歯を固定している歯槽骨に炎症が波及し、吸収が始まり、最後に歯が脱落してしまいます。                                           
歯が抜け落ちることで、炎症の根源のプラークもなくなりますので、病気の進行もそこで止まるのが普通ですが、犬歯や後臼歯のように根の深い歯が侵された場合には、歯が脱落するまでに時間がかかることもあり、歯槽骨のダメージが大きく、歯が脱落した後も病気は進行し、最悪の場合顎の骨が折れてしまうこともあります。                               
プラークの歯冠寄り(目で見える部分)の部分は、プラーク中の有機基質にリン酸カルシウムと炭酸塩が沈着することにより石灰化されて歯石と呼ばれる褐色の石のように硬い塊になります。この歯石自体は、組織に対する炎症性はプラークよりは少ないのですが、歯周病の増悪因子になっています。
歯の見えている部分に歯石が少しでも付いていたら、ポケットの中にプラークがあることに間違いありません。このプラークこそが大問題なりです。歯石が少ないからまだ安心ではないのです。

● 治療と予防

治療法は、歯周炎の程度と範囲、また歯の支持組織の治癒力によって違ってきますが、まずは主病因であるプラークの除去です。専用の歯科器具によっておこないますが、すでに歯石になってしまっている場合には、スケーリング(歯石除去術)が必要になります。

スケーリングに使う器具は、超音波スケーラーと呼ばれる物で、皆さんも一度は、歯医者さんで経験されていると思いますが、あのキーンという音のするやつです。器具が歯にさわると痛いような痒いような独特の感触があり、ポケット(歯肉溝)に入れられるとちょっと痛いあれです。

非常におとなしい我慢強いペットであれば麻酔をせずに実施できますが、ほとんどの場合麻酔をしなければ安全に実施出来ません。 スケーリング実施後は、歯面の凹凸をポリッシング(研磨)で滑らかにし、プラークの再付着を防止します。

症状の進んだもの、歯根の先端まで病変が進んでいるものでは、いくら清浄化しても歯槽骨との空間はうまりません。歯が動くことによって食餌がしにくくなり全身的影響がありすぎるので抜歯します。ただし第4前臼歯と犬歯については可能な限り残します。これらの歯は、他の歯に比べていろいろなことに使われていますので(というよりは、その他の歯は、ほとんどなんの役にも立っていないので、なくても大した影響がないのです。)よほどのことがない限り温存につとめます。

こんな話しがあります。子犬のときにはとてもボール遊びがすきなワンちゃんが、1歳ぐらいからあまりボールで遊ばなくなったので、ご主人は、大人になったから遊ばなくなったんだなと考えました。それ以外とても元気で食欲もあり別段異常が有るようには見えなかったのです。2年程して健康診断で動物病院にいったときに、歯石がすごいから取りましょうと言われ、歯石を取って、抜歯も2本ほど実施しました。それから1週間もしないうちに一日中ボールで遊ぶようになったのです。このワンちゃんは、大人になったから遊ばなくなったのではなく、歯が痛かったのです。でもちょっと変だなと思いませんか?歯が痛かったのなら、それも2年間ずっと痛かったなら、食べるのもいやがって食餌の量が減って体重も減るのでが普通ではないのかとお思いになりますよね。たしかに人間ならそうなるでしょう。ところが犬や猫は人間に比べて痛みに対して強いのです。(ヒトが動物の中で弱すぎるのかも??)ですから生きるための最低限のことは、出来てしまうのです。このワンちゃんは運のいいことに、病変が歯根で止まっていて歯槽骨に波及していませんでした。2年もほっとけば歯槽骨がやられていてもおかしくはありません。もし歯槽骨がやられていたら食餌の量も減っていたかもしれません。

次に予防法ですが、これは我々人間と同じで歯磨きです。今もう歯石が付いてしまっている場合は、それをきれいにしてから。付いていないのなら今すぐに始めましょう。

まずは歯磨きに慣らすことから始めます。市販のペット用の歯ブラシを使ってもいいですし、ガーゼを指にまいて使ってもいいです。歯ブラシや指を口の中に入れて、歯茎と歯を軽くマッサージする事から始めて下さい。最初はものすごく嫌がりますが、次第に慣れてきますので、根気よく続けて下さい。慣れてきたらペット用の歯磨きを使用します。嫌がらなければ最初から歯磨きを使ってもかまいません。歯の裏側もお忘れ無く。歯磨きが出来るようになったら、口腔内pH調整薬(マウスウォッシャー)を週に3回ほど塗布してやれば完ぺきです。(歯石除去後は直ちにマウスウォッシャーを使います)

それから歯磨きには、歯ブラシより硬いものは決して使わないで下さい。犬や猫の歯は、人間に比べてエナメル質がとても薄いので、硬い物でガリガリやるとすぐ剥げてしまいます。テレビのCMでもやってる知覚過敏症になってしまいます。またポケットにようじ等を押し込むと歯肉と歯の付着がはずれてしまいます。そうすると食べた物が直接歯根に進入してしまいプラークもないのに歯根炎を造ってしまいます。過ぎたるは及ばざるがごとしです。ちなみにエナメル質の厚さは、奥歯の一番大きい歯で、人は約1mm、犬で0.4mm、猫に至っては0.2mmしかありません。

デンタル・ホーム・ケアーの方法のについては、ご来院いただいた折りに詳しくご説明いたしますのでお聞き下さい。


 家庭で出来る歯の健康診断

ここで簡単な歯の健康診断の方法をお教えしましょう。                   
まずペットの顔を右と左で見比べて下さい。唇の周囲の汚れ方がアンバランスなら汚れている側の歯に異常があることが多いです。ヨダレ焼けで黒くなっている場合は、要注意です。       

次に食餌している時によく見て下さい。特にドライフードの時によくわかります。ペット達はあまり噛まずに丸飲みしますがそれでも時々噛みます。その噛むときに左右均等に噛んでいれば問題ないのですが、右側なら右、左側なら左だけで噛んでいる場合にはその反対側の歯に異常があります。ひどい場合には悪い方の歯を上にくるように顔をひねって食べることもあります。我々もそういえば歯が痛いときには顔をひねって食べますよね。                         
ここまで異常がなければ次は直接歯と歯茎を見ます、歯の上に褐色の歯石が付いていないかどうか見て下さい。もし少しでもついていればポケットにはプラークが付着していると思って下さい。(プラークの有無の判断についてはご家庭では難しいです。)もし歯石が歯肉に接しているようだと、直ちに歯石取りの必要があります。                              

次に歯茎を見ます。歯肉から歯への移行はスムーズかどうか。段々になっていたりどこかの歯の部分だけ異常に後退していないか見て下さい。もしあればそれは歯周炎です。直ちにプラーク除去をしなければ近いうちに歯根炎に移行します。あとは歯茎の色です。一様に淡いピンク色していれば問題ないのですが、歯と歯肉の境目により赤味の強いラインが見られるようなら異常です。歯肉炎から歯肉増殖や過形成が始まっています。直ちに処置が必要です。                  

ご家庭で出来るのはこのあたりまでです。ここまでの症状が1つでもあるようならすぐにご来院下さい。かなり症状としては進行しています。この前段階の症状であるポケットの拡大等の診断は病院で行います。専用の器具で行わないとかえって危ないですから。                

ポケットの拡大程度の段階で処置すれば完全に治癒できます。症状が進んでいると、病状の進行を止めることは出来ても完全治癒は出来ない場合があります。ですから半年に一度くらいは歯の定期検診を受けて下さい。                                    

 虫歯の話

歯周病の話のついでに虫歯の話も簡単にしておきましょう。                 
まずペット達に虫歯があると思いますか? 無いと思いますか?  答は、あります。ただし人間に比べると発生率は低いです。                               
虫歯(齲歯)とは、歯牙硬組織からのカルシウム等の無機質の脱灰のことで、第一段階のエナメル質の脱灰は、口腔内細菌の酸の産生によって生じます。炭水化物から酸を産生する齲蝕原性の歯垢細菌によって引き起こされます。そして第二段階では、異なる種類の細菌からのタンパク分解酵素が、
エナメル質の破壊によって露出した象牙質の有機成分を破壊します。この2つの過程によって歯に穴があき虫歯(齲歯)が出来上がります。                           
ではなぜ犬や猫は虫歯(齲歯)が人に比べて少ないのでしょう。元来、犬も猫も肉食獣です。肉食獣の食餌には、我々人間のような雑食性や草食性の動物の食餌に比べて蝕原性の炭水化物のような成分が少ないこと。口腔内環境の違いから、齲蝕原性の酸産生細菌が歯垢細菌の中にみられないこと。

肉食獣の歯の多くは円錐形であり、人間の歯にみられるような細菌や食物が付着しやすい歯の隣接面や、溝が少ない。要するに歯と歯の間が広く、歯の形も比較的つるりとしているということ。これらのことからペット達には虫歯が少ないのです。                        

とは言うものの、歯石除去してみるとその下に大きな虫歯があったり、硬い物をかんで欠けてしまった歯を放置したためにそこが虫歯になったりとけっこうあります。肉食獣の清浄な口の中の状態では 存在しない酸産生細菌も、歯垢べったりの劣悪な環境では繁殖しますし、最近のドッグフードやキャットフードには野菜が入れてあったりして、本来の食生活から随分と変わってきて炭水化物を多く採るようになってきています。こうなってくると口の中を意識的にきれいにしておかないと虫歯(齲歯)の発生率も必然的に上昇してきます。                            

虫歯の症状は、人間と同じです。歯髄まで達しているとかなりの痛みがあります。またそこまでいっていなくても、象牙質が露出して知覚過敏などの症状があることがあります。最近水を飲む時考え込んだり、スピードがやけに遅くなったりしたら疑ってみて下さい。               

治療は、歯髄に達しているかいないかで違ってきます。達していなければ、削って終わりか、その上を埋めて終わりです。処置は1回で終わります。歯髄まで達していたらこうは、いきません。処置はややこしくなりますのでここでは省きますが、1回の処置では終わりません。数回の処置が必要になります。ただし歯をいじるときはほとんどの場合は、麻酔をかける必要があるので、現実に治療が可能かどうかは、全身状態とのかねあいもあります。歯髄からの感染で歯根部が化膿している歯根膿瘍まで進行している場合には、抜歯する事の方が多いと思います。               

こうならないためにも、歯周病のところでも書きましたが、歯の健康診断も定期的に受診して下さい。早期発見なら簡単な処置で治ります。 



 

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