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基礎講座

知って得するノミの話

ここ2〜3年、ノミに対する新しい薬品が続々と発売になりました。今迄もあった 親虫に対する薬だけではなく、卵や子虫に効く薬も発売になりました。ここではノミ の昆虫としての基本をご説明するとともに最近のノミ駆除剤についても簡単に触れたいと思います。                         最も進化した生き物といわれ、体長は2〜3mm。体長の300倍もの距離を一度に 飛び跳ねることができる小さなスーパー・スター。それがノミです。  が、ペットにとっても私達人間にとってもちょっと厄介な昆虫のようです。これからこ のスーパー・スターの起源、ライフサイクル、駆除方法などについてお話ししましょ う。 
                                   

● ノミの起源

ノミは、長翅目のシリアゲムシから進化したといわれています。ですから長翅目か ら進化した双翅目(ハエ類)とも近縁です。                ノミの祖先は、哺乳動物や鳥類の排泄物や羽生を餌としていたと考えられています。 その祖先が進化の途中で動物寄生性を獲得し、最も最近この世に現われた最も進化し た昆虫なのです。羽を失した代わりにとてつもない脚力を身につけ、動物の身体で最 も栄養に富む血液を餌として、劣悪な環境にも生き延びる生命力を身につけ・・・・ 数え上げたらきりがないぐらい進化の王道を進んで来た昆虫なのです。      

 犬と猫のノミ

約2000種といわれるノミのうち、犬猫で見られるのは、イヌノミとネコノミで す。前者は犬に後者は猫に寄生するのを基本としますが、近年犬猫から採取されるノミはほとんどネコノミです。ただ北海道では犬ノミもみられるそうですが。ネコノミ は寄生宿主を限定しないのも特徴です。             この季節ネコノミの吸血によって、犬や猫が皮膚炎やアレルギーや貧血を起こす例 が多発しています。また犬や猫だけではなく、人間においてもネコノミ由来の人刺咬症やアレルギー疾患が増加しています。いくらスーパー・スターでもこのやんちゃぶりには、ちょっと困ったものです。これからノミの習性を勉強してノミに立ち向かいましょう。 

犬ノミ
猫ノミ
                                
 ノミの分布

ノミは温暖で湿度の高い所を好むので、熱帯や亜熱帯の海岸や湿った所に一番多く  みられます。その次に温帯地域で多くみられます。しかし今では、セントラルヒーティ ングの普及により北欧南部にまでその活動範囲を広げています。日本では全国どこでも普通に見られます。
家庭内では、卵や幼虫や蛹がカーペット、床、ソファー、ベッド等、ペットが寝そ べるような場所に多く見られます。特に幼虫期は、負の走光性(光から逃げる)、正の走地性(下へ向かう)を持ち、カーペットの奥やゴミの下にいることが多く、飼い主にもなかなか見つけられないことが多いようです。ペットが最も多く過ごす場所、 つまり寝床が典型的な幼虫の繁殖場所(ホット・スポット)となります。屋外では、ノミは犬小屋、花壇、潅木の下など、ペットが暑さを避けて涼む場所でその生息が認められていますが、芝生などの直射日光が当たるところにはノミはいません。ノミの屋外での繁殖はほとんど不可能だと言われています。       

● ノミのライフサイクル

気温が30℃以上で十分な湿度があればノミのライフサイクル(卵→幼虫→さなぎ →成虫)は約3週間で完了します。夏に散歩でノミ一匹連れて来てしまうと3週間後 には大変なことになります。1匹のノミは一日に20個、一生の間に400個の卵を生みま す。もしその卵が全部親虫になったら・・・考えただけでゾッとします。では、産み落とされた卵からノミの一生を見てみましょう。                

〈卵〉
卵は、0.5mmの真珠色の真円形をしています。卵はペットの毛の中に産み落とされま すがすぐに落下します。
ですからノミのいるペットが歩いた所にはノミ卵が有ると思っていた方がよいでしょう。産卵後3〜4日で幼虫になります。           

〈幼虫〉
幼虫は2回の脱皮を行い、3令まで発育します。幼虫は動物に対する寄生性はなく、 環境中の有機物(フケやアカ等)を食べて育ち、特にノミ成虫の糞は発育にとって欠く事のできないものです。初令幼虫は2mm程度てすが、終令幼虫は5mmにもなります。 初令幼虫から終令幼虫までの発育は、7日から18日ぐらいです。         

〈蛹〉
成熟幼虫は、絹状の繭を紡ぎ、その中で蛹へと変態します。繭は卵型で白っぽく、 粗く紡がれています。繭には粘着性があり、カーペットの線維の中で環境中のゴミな どがくっつきカモフラージュされています。蛹になって約10日で羽化の準備が整います。蛹の時期は、不適な生育条件や多くの殺虫剤に対して抵抗性を示します。環境条 件が整はなければ数カ月間も蛹のままで生き続けることが出来ます。
成虫発育を完了した蛹は、繭から出るきっかけとなる刺激を受けるまで、数日から数週間、時には数カ月繭の中に留まっています。宿主が近くにいる刺激(二酸化炭素、振動や熱等)を受けると羽化します。ペットと共に長期間留守にした後でノミの被害にあうのは、ノミの羽化が遅れて同時に多数起こる為です。           

〈成虫〉
羽化した成虫は、直ちに宿主を捜し始めます。宿主の発する、体温、振動や二酸化 炭素に誘引されて宿主を見つけます。もし宿主が見つからなくても、吸血なしに1週 間から3週間は生存出来ます。
ひとたび宿主を発見し飛び移った後は、宿主の体の表面を動き回り血管を捜し、数秒の内に吸血を開始し、8〜24時間の間に交尾をします。
雌ノミは1日に自身の体重の2倍の重さの卵を生みます。数にして20個程です。それだけの卵を生むために1日に体重の15倍もの量の血液を吸血します。吸血する時に は、口器で開けた宿主の皮膚の穴に、血液を固まらなくさせる作用のある唾液をその 中に注入します。この唾液が後で触れるノミアレルギーの原因の一つになります。成虫の寿命は約3週間です(長いものでは6週間)。その間雌ノミは卵を生み続け ます。またよほどのことがないかぎり別の宿主に移動することはありません。雌ノミが1日に吸血する量は、約13μlです。一生での量は約0.3mlになります。10 匹いれば3ml、100匹いれば30mlの血液が3週間の間に抜かれることになります。小型のペットでは充分貧血を起こす量です。                   

 ノミのもたらす病気と被害

ノミは不快なだけではなく、ペットや人に痒みなどをもたらします。叉アレルギー 性皮膚炎やいくつかの病気の伝播にも関与しています。多数寄生すると貧血を起こす こともあります。歴史的には、腺ペストの媒介昆虫になったり、チフスの媒介者として恐れられていましたが、現在そのような病気は撲滅されていますが、新たにアレルギーの原因になっ たりとまだまだ悪さを止める気はないようです。 ここではノミが原因でおこる色々な病気を見ていきましょう。                         
〈イヌネコのノミによる皮膚炎〉 
ノミに咬まれると、それが刺激となり痒みを感じます。咬まれるまでもなく、ノミ が体を動き回るだけで痒みを感じることもあります。ノミは、吸血する際に血液が固 まらないように自分の抗凝固作用のある唾液を宿主に注入します。この唾液は宿主に とって異物ですからノミに刺された局所では、この異物を排除しようとして炎症反応 が引き起こされます。ただでさえ刺されて物理的に炎症を起こして痒いのに、このうえ唾液で化学的にも炎症をおこして、もう夜も寝れなくなるほど痒くてたまりません。 これがノミによる皮膚炎です。この反応はネコやイヌよりも人の方がが強く出るようです。              イヌがじっと自分の体をみつめてその視線が前に行ったり後ろに行ったりしていて、 時々毛の生え際を前歯で咬んでいるのは、動き回っているノミをなんとか捕まえよう としているときです。寝ているときに皮膚の表面だけひくひく動かしているときもノ ミがいる可能性があります。人間はできませんが、動物は皮膚の下の体幹皮筋が発達 していて皮膚を動かすことができます。ノミが動き回ったり、咬んだときの刺激に反応しているのです。こんなことが毎日続けばさすがのイヌやネコも睡眠不足になってしまいます。  
                              
〈アレルギー性皮膚炎〉
皮膚炎の原因にノミの唾液がありましたが、このノミの唾液に対する抗体が宿主の体内で作られてしまうと、今度はアレルギー性の皮膚炎が起こってきます。 抗体を作るに十分な量の唾液が宿主の体内に入ると、言い替えると多数のノミが寄生して頻回に刺すと、その唾液が抗原刺激となりイヌやネコの体内にノミの唾液に対する抗体が作られます。約12週間におよぶ間欠的な感作によって皮膚炎を起こす抗体が作成さ れるといわれています。ただし連続的な感作においては出来にくいともいわれています。つまり驚くほどの多数が夏中寄生しているのにアレルギーを起こさないのに、時々見つける程度の寄生なのにアレルギーに移行してしまうことがあるということです。 また夏の間多くのノミが寄生していたのにたいした皮膚炎も起こさなかったのに秋口 に入ってノミが減ってきたら激しく痒がるようになることがあります。これはアレル ギーの病態が完成するのに長い時間が必要だからです。 ひとたびアレルギーに移行してしまうと、後は寄生数に関係なく1匹でもノミがいてその唾液が体内にはいると激しいアレルギー性皮膚炎を発症してきます。 猫の場合、ノミによるアレルギー性皮膚炎の別名を麦粒性皮膚炎とも言います。本来は、麦粒性皮膚炎の原因の一つがノミによるアレルギー性皮膚炎なのですが、猫の麦粒性皮膚炎の原因の大部分がノミアレルギー性皮膚炎なので同義語として扱われることが多いようです。麦粒性皮膚炎、読んで字の如く麦の粒条の隆起が病変部に現れる皮膚炎のことです。一番の好発部位は腰背部です。腰から尾にかけての背骨にって5mm程度のブツブツができて毛が無くなるまで舐め続けます。夜も眠れない程、痒くて痒くてしょうがないようです。
犬の場合は、猫ほど定型的な病変は出ないことが多いですが、好発部位はほぼ同じ です。                                  もしノミアレルギーになってしまった場合の治療の第一は、アレルギーの引き金に なるノミの唾液を体内に入れないことです。要するに一匹たりともノミを近づけない ことです。ただ注意していても小さいノミを完全に近づけないことは至難の業です。 腰から後ろの背骨のあたりをものすごく痒がったり、ブツブツができたりしたらノミ アレネギーの可能性大です。すぐに動物病院へ診察に行ってください。      

 ノミの予防

ここ2〜3年でノミの予防に関しては、様相が一変しました。それまではノミ取り 首輪や、殺虫剤的なお薬でノミを殺していましたが、ノミにも耐性が出来始めていて なかなか完全な効果が出ていませんでした。そこにまず最初に登場してきたのが、プログラムです。続いて登場してきたのがフロントラインスプレーです。そして昨年フロントライスポットオンとアドバンテージスポットが発売開始になりノミ予防薬が出 そろいました。これらのお薬が出たことで、今ではほぼ完全にノミの寄生予防や駆除ができるようになりました。                         

〈プログラム〉
この動物用医薬品は、ルフェヌロンという物質が主成分です。のみは昆虫の一種で 堅い外皮に覆われています。この堅い外皮はキチンという物質でできていますが、プログラムの主成分であるルフェヌロンは、このキチンの合成を阻害します。昆虫は、変態することで成虫になりますが、その過程でのキチンの合成を阻害されてしまいま すので成虫になることはできません。犬の場合は、月に一度錠剤を、猫の場合は半年 に一回注射か、月に一度液体のお薬を飲ませることで効果を発揮します。ノミは、寄生した犬や猫の血液を吸ってそれを栄養として産卵しますが、プログラムを投与され ている犬や猫の血液を吸ったノミから生まれた卵は成虫まで成長できません。ノミの ライフサイクルのところでも説明しましたが、野外からつれてくるノミの数はほんの少数です。あとはペットの犬や猫の寝床などで繁殖しています。ですからプログラムを投与しておくことで大量寄生は予防できるわけです。今年このプログラムとフィラ リアの予防薬が合剤になったものがシスティックとして発売になりました。    

〈フロントライン〉
フロントラインには、スプレーとスポットオンがありますが効果は同じです。効果 の持続時間は、スプレーの場合犬では3ヶ月、猫では2ヶ月。スポットオンの場合犬 は2ヶ月、猫で1月です。フロントラインの主成分のフィプロニルは、非常に油と相 性が良く、このことが全身くまなく分布し効果時間を長くさせています。塗布された フロントラインは体表の皮脂に乗って全身にくまなく分布していきます。全身に分布 しながら皮脂腺の中の油にも溶け込んでいきます。この皮脂腺の中の油に溶け込んだ 成分が、皮脂が体表に出ていくときに一緒に出ていき効果を長続きさせています。ま たフロントラインは、ダニの寄生予防にも効果があります。             

〈アトバンテージスポット〉
アドバンテージスポットは、犬や猫の肩甲部に数滴たらすだけで約1ヶ月ノミの寄生を予防します。アドバンテージの主成分であるイミダクロプリドに接触したノミは元気がなくなり衰弱死します。ですから寄生後の死亡までの間に吸血をする可能性も 低いといわれています。この他にも、ノミに対する薬はたくさんあります。ここでは最近の新しいものだけ紹介いたしました。詳しくはお近くの杉並獣医師会開院病院でご質問ください。

 

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